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■薔薇の肖像


  【後藤 又兵衛先生】   バレエ”バラの精”                           


    私は元来、静物画が苦手である。苦手という意味は静物とか風景を主題にする

   と、どうしても情熱が湧かないのである。内から燃え上がるものがないのである。

    私とて山紫水明、花鳥風月を美しいと思うのだが、情熱を注いで表現したいとは

   どうしても思えない。自然はそれ自体が美なのであって、それを絵にするとなると

   所詮、絵空事になるのである。私はそれを恐れる。

    で、私は特異の世界(?)イマジネーションの世界で薔薇を描いてみようとした

   わけである。バレエ”バラの精”のイメージが湧いてきた。


    


バレエ”バラの精”



    1910年代、ディアギレフ率いるロシアバレエ団が花のパリで上演した数々の前

   衛バレエの記録は、大方の士の知るところであろう。

   当時まだ新人作曲家であったストラビンスキーやプロコイエフの作品を大胆にバ

   レエ化して、カルサーヴィナ、ルビンシテーインなどの名花が、当時としてはエロチ

   ックと思われる姿態で踊ったのであるが、特に舞踊の神様といわれたのがニジ

   ンスキーであること、ご承知のとおりであろう。

   ニジンスキーの踊りで特に有名なのが、”牧神の午後”(ドビッシー曲)”バラの精”

   (ウェーバー原曲、ベルリオーズ編曲)でニジンスキーの天才的な舞踊に加えて

   バクストの衣装デザインがパリの観客を驚かしたことは伝説的ですらある。

    勿論、私は資料で知るのみであるが、この”バラの精”なるバレエからイメージ

   が湧き出てきたのである。そして描いた作品である。

    舞踊会から家に帰った娘がバラに思いをよせると、バラの精が窓から現れて娘

   と踊る、というバレエである。




   
1993年
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